令和3年4月28日,相続登記を義務化するという法律が公布されました。公布から3年以内に施行され,施行日前に生じた相続にも遡及して適用されます。
これまでは,相続登記は義務ではありませんでしたので,亡くなった方の名義のままに放置されている不動産もかなりの数があります。
しかし,放置しておくと,何代にもわたって代替わりが起こり,相続人が数十人にもなってしまう,ということにもなりかねません。そうなると,相続人の調査だけでも時間も費用もかかるうえ,相続人の人数が多くなれば意見を集約することも難しくなります。
義務化はまだ少し先ですが,後回しにされることなく,この機会に,早めに遺産分割協議をされることをおすすめします。
また,ちょっと別の視点からですが,遺産分割には,各相続人の,協議当時の生活環境や経済状況などが大きく影響する場合があることもお話したいと思います。
たとえば,相続人が甲,乙だとします。乙は,従来はずっと「甲が親の面倒を見る代わりに,相続は甲に譲る。」と言っていたとします。しかし,たまたま,乙が,相続発生後しばらくして,失業したり,病気になったり,子どもに大きな費用がかかることになったり,などと予想しなかった事態が起こるということもありえます。乙としては,「やっぱりもらえるものはもらっておきたい。」という気持ちが生じるかもしれませんし,甲からすれば,「話が違う。とても納得できない。」などということになってしまうかもしれません。
どのように相続するのがいいかは,それぞれのご親族の事情によるので一般的な答えはないのですが,言いたいのは,時間が経つと状況が変化して,「相続争いなんてうちには関係ない」と思っていても,突如,そうなってしまうことがある,ということです。
そして,熾烈な争いになれば,その後,円満な親族関係が回復することは難しいと思われます。
話し合いができる時に速やかに遺産分割協議し,円満な関係が保たれていたならば,その後,もし,誰かに困ったことが生じても互いに助け合えたかもしれないのにな,と思います。
2021.08.24コラム